甘木朝倉 美酒の会

〜日本酒の真価〜  Vol.10

 いつの頃からか、私にとって日本酒は、嗜好品から生活必需品になった。私の生活にしっかりと食い込んでいる。も
ちろん日本酒だけが酒ではなく、ビール、ワイン、ウィスキーと、どれも好きなのですが、やはり日本酒。今さらなが
ら日本酒である。けれどその日本酒が多くの人に敬遠されているのはなぜか? 実藤委員長、藤井副委員長ともに嫌が
る。
いくら美酒でも、飲めない人に無理してすすめて飲ます様な事はしたくないんですが、たぶん、日本酒が嫌いなの
ではなく、まずい日本酒が嫌いだと言う事だと思う。まずい日本酒=“三増酒”、“本醸造酒”など、私に言わせると
“清酒風アルコール”を日本酒だと勘違いして、あるいは大手メーカーが宣伝してるからといって、その酒が日本酒だ
と、飲んでみて “マズイ” と、もう2度と飲みたくないと頭に焼き付いてしまったのではないかと思う。

 ここで言う日本酒は“地酒”、地方の銘酒のことである。“地酒”という言葉はもともと、伊丹、池田、灘といった
酒の本場で造られる酒を江戸から見て「下り酒」と呼ぶのに対し、その他の産地を「地廻りの酒」とよんで区別した江
戸時代からの言葉。地酒はレベルの低い酒というイメージが落語にも出てくる位、少々蔑んだ意味合いが
20年程前まで
続いてたのが、その後「灘、伏見に負けるな!」と地方の蔵元がこぞって情熱を注いだのが明治から始まった“日本酒
品評会”への出品であった。これをきっかけに頭角を現したのが新潟で、越後の酒はやがて“越乃寒梅”という地方銘
酒の偉大な先駆者を生み出
し、“久保田”“八海山”“亀の翁”“雪中梅”“〆張鶴”などなど新潟ブランドを次々と
世に送り込んでくる訳ですが、ここ数年で今度は、新潟ブランド
VS他の地方銘蔵になり、この地方銘蔵の筆頭が、個人
的には私の紹介している真の日本酒である。しかし、灘、伏見が取った路線は戦後の酒不足の中で、米が無くても多く
の人達に安く酒を提供するという非常に意義のある事で“三増酒”が日本中を席捲するのは仕方ないことですが、小回
りの利かない大手メーカーは酒不足が解消されてもなお、同じ路線を突っ走る残念な結果が日本酒のイメージ、日本酒
の文化さえも駄目にしているように思える。
まあ、それはそれとして、
真の地酒はまず、純米酒。米と米麹だけを用いて造られた酒。いいかえれば、これ以外のお
酒には、すべて別の物、醸造用アルコールが原料に含まれている。ラベルを見ると必ずその表示が米、米麹の次に記さ
れている。戦前にはこんな言葉はなかったらしい。
なぜなら、お酒はすべて米と米麹だけで造っていたので、お酒=純
米酒だったのだ。ところが戦後、醸造用アルコールが開発され、普及し、たちまち純米酒は特別な酒になり、ほとんど
姿を消していった。しかし、心あるいくつかのまじめな蔵元は「やはり酒は純米酒ではなかろうか?」と、ひそかに努
力と研鑽を重ね、当初は「飲みにくい」「重たい」「香りが悪い」と悪評を浴びた純米酒を見事に開花させていき、徳川
将軍さえも飲む事ができなかった酒を今、私たちが飲めるようにした功績はすばらしいかぎりである。

※三増酒とは・・・・米で作った清酒のもろみに、工業的に作ったアルコール、ブドウ糖などの糖類、酸味料、化学調味料、水
           を加えて、米だけで造るより三倍の量に増やす製法で出来た酒。

 
 ※本醸造酒とは・・・酒を醸造する最後の段階で工業的に作ったアルコールを添加して造った酒で白米1トンにつき120g以
           下のアルコールを添加しているもの。
純米酒を本醸造酒にすると、約34%生産量が増えると言われてい
           る。

 地酒がここまで成長していった理由は地酒が地酒ではなくなったからだと思う。かつて地酒は、その地域の米で造ら
れ、その地域の人だけを相手に飲まれてきた。しかし今では、例えば埼玉の酒蔵が兵庫の山田錦を仕入れ、生まれた酒
は東京やその他の都市に送られて消費される。特定名称酒(吟醸や大吟醸酒など高品質の酒)のほとんどを、県外に出
荷する蔵は少なくない。情報と輸送機関の発達によって、地方の酒蔵は全国に点在する理解ある酒屋や居酒屋に酒を預
け、お客さんの舌を潤す。秋田の酒は秋田の地の物が1番相性がいい、また、海の蔵には海の幸、山の蔵には山の幸が
1番相性がいい様に水・空気・自然・気候・地形など、そこに住む人々に大きな影響を与える総合的な風土は、日本酒
にとって非常に大事なとこではあるが、甘木の地で日本全国の真の日本酒を味わえる事は酒飲みにとって、すごく贅沢
で、すごく楽しい事ではなかろうか?私のコレクションの一品や多田
OB、高木OBのコレクションの一品を飲み比べ、
冷と燗酒を飲み比べたりして、おおいに美酒を楽しんで頂きたい。ぜひ美酒の会へ。今月の美酒の会は多くなりそうで
す。


美酒の会 田代  宏